ヒッチハイクストーリー ヨルダン

November 21, 2004 Sunday

故障車

ヨルダンにはキングスハイウェイという立派な名前の道があります。
この道、名前こそ立派ですが、実はただの旧道っていうか山道で、新道が出来た今では主役の座を完全にそちらに譲ってしまっています。

そんなご隠居状態の王様のハイウェイですが、ここからの景観はすばらしいとガイドに書いてあるのを読み、僕はレンタカーでアンマン−アカバ間を走破する計画を立てたのでした。

旅の道中で知り合った二人組みと一緒に3人でドライブを楽しみ、途中迷ったりしながらも、一番の目的だったワディ・ムジブという大峡谷まで無事到着し、そこで運良く綺麗な夕陽も拝むこともできました。

しかし好事魔多し、ワディ・ムジブの谷底を過ぎ、宿泊予定地のカラクという街に向けて坂を上っていたとき、突然アクセルから力が抜けたのです。

カックン。ブホーン。
あっ、あれっ??? ギアを入れてるのにニュートラルになってるぅ!!
何で、何で、何で。

人気も無い谷底だけあって、辺りはもう真っ暗です。
よりによってこんな所でどうして。。。
車を道端に止め、通りかかる車を待っていても、そこにはただ闇が広がるだけ。
平静を装いながらも、もう半分パニック状態です。

そうこうしているうちに、ようやく一台の車が通りかかりました。
その車に乗っていたのは、優しきヨルダン軍人ガッサンとその部下。
ここは危ないから送ってあげるという言葉に甘えて、僕たちは彼らの車に乗り込んだのでした。

やがて車は、少し前に夕陽を拝んだ展望台に止まりました。
そこでガッサンが差し出してくれたのはブドウでした。

とても甘くて、おいしいブドウでした。
一粒、また一粒とブドウを食べていると僕の気持ちも少し落ち着いてきました。
ふと空を見上げると、そこには満天の星空が広がっていました。

するとガッサンはさりげなく車のヘッドライトを消してくれたのです。
更に生き生きと輝きを増していく星達。

もっとたくさん星が見えるところに行った事もあるけど、このときの星空よりも心に訴えてくる星空に、僕はまだ出会っていません。


ちなみに僕達の車が故障した場所は、夜になるとオオカミや、毒蛇が出て非常に危険なところなのだそうです。
もしガッサンに会っていなかったらと思うとぞっとします。

人情の国ヨルダン。
僕にとって忘れられない国の一つです。


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